メル友の瑞江さんは二児の母でもある。 二年ほど前から旦那さんのご両親と同居していたが、 ここ数ヶ月、彼女から届くメールは 嫁姑の諍いについての愚痴だらけになっている。 大変だろうなとは思うけれど、口を挟める問題ではないし、 瑞江さんは旦那さんやお子さんのことはとても大切にしているから、 「大変だね」「元気出して」と返すにとどめておいた。 瑞江さんも「ありがとう」と返してくれていた。
しかし瑞江さんの堪忍袋の緒はすでに切れかかっていたらしく、 「どこか遠くへ行きたい」「耐えられない」と切々と訴えるようになってきた。 「何週間か旅行に行きたいよ。あなたはいいね、独りものだもの」
私はこう返事を出した。 「一日に、あるいは一週間に一度でもいい、『嫁』でも『お母さん』でもない、 『瑞江さん』に戻れる時間を作ったらどうだろう。 そのくらいなら許してもらってもいいんじゃないか、旦那さんにも協力してもらえないだろうか」 「何週間も旅に出てしまったらきっと、帰りたくなくなっちゃうんじゃないかな」 「それでも辛いなら、カウンセリングを受けてみるのもいいかもしれないよ」 これだけではなんなので、 「実は私もカウンセリングを受けている」と告白した。
私は気鬱を持ちやすい性質なのだ。家系的にそうらしい。 それは周期的に襲ってくる。酷い時には一日中泣いていたりする。
瑞江さんからの返信。 「前向きに生きるために、あなたも誰かに相談すればいい」
私の気鬱は、 悩み事に付随するものではない。 悩み事と言えるものはないのに些細なことで死にたくなるから辛いのだ。
誰かに相談しろという安易な提案が 人を傷つけることを知って 私と瑞江さんのメールのやりとりは そのまましぼんで消えていった。
でも今でも、遠くに行きたいと言った彼女を どう励ますべきだったのかは わからない。
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